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私たちのこだわり
concept


 中原屋は、JR東海道本線二川駅から旧東海道を東へ1kmの所にあります。

 二川は東海道五十三次の33番目の宿場町で、東へ3~4km進むと静岡県との県境になります。

 店の東100mほどの所には平成3年に改修工事を終えた本陣の遺構がありますが、東海道筋には滋賀県草津市と二川に現存するだけとなりました。現在は併設された資料館や、平成17年に改修工事を終えた旅籠屋「清明屋」とともに豊橋市二川宿本陣資料館として一般公開されています。

 平成27年11月に商屋「駒屋」がオープンし、数々のイベントが計画、実行され、それなりの成果があがっています。

 しかしながら商店街としての町並みは寂れる一方で、この点については全国の平均値と言ってもいい衰退振りです。

 私の生業である菓子製造販売業も12、3年前には豊橋市内に130店以上ありましたが、現在は60店強と、僅かな間に半数以下になってしまいました。原因として郊外への大型店進出が引き金となったことは否めませんが、現在一番影響を及ぼしているのはコンビニの台頭だろうと感じています。広い駐車場、入りやすい店舗、1つでも買える買いやすさ、すべて私共の店に欠ける要素だと思います。味はどうでしょうか。おいしい物も多いし、おいしくなってきたと思います。

 ただ専門的にみると、餡の香りや色など、見れば見るほど酷いものに思えることもあります。とはいえ、専門的という見方がどれほど必要でしょうか。見ようによっては専門的などというのは私共のエゴでしかありません。おいしい物が売れるのではなく、売れるものがおいしいのです。

 ここに職人としてのジレンマが生まれます。私が子供の頃、二川の旧東海道沿いに7店あった製造販売をしていた菓子店は2店だけになってしまいました。この波にのまれないためにどうするべきかは、これからの自分の店の在り方を考えることでもあると思います。



 市場の動向を知り販売を促進することは、個人店では大手のコンビニに太刀打ちできません。次々に商品を開発することも敵いません。ただ、コンビニでは毎年新商品が出るものの、次の年には見かけなくなっていることもよくあります。私たち個人店はもう少し腰を据えて商品を開発することをすべきだと思います。大手が市場に提案されるのに対し、私共は作り手が提案するという点がそれぞれの存在価値の違いだとも思います。

 弊店にもそれぞれの商品にそれぞれのこだわりがあります。

 例えば、餡を炊く砂糖は特別なものを除いて氷砂糖を使っています。上白糖とグラニュー糖ではグラニュー糖のほうが少し高価ですが、味は大きく違い、炊き上げた餡の違いは10人中8~9人は判るだろうと思います。一方、氷砂糖はグラニュー糖の倍近い値段がしますが、その違いが判る人は10人に、1~2人でしょうか。それでも私は氷砂糖を使います。10人に1人判ればいいというのが私の考えです。逆に大手は7~8割の人に支持されなければ使わないと思います。10人に1人の人から商品が伝わってくれることが小さな店の在り方でもあると思っています。

 弊店でよく売れている商品に「笹麩もち」があります。この商品も試行錯誤を繰り返して今の商品になりました。私は今使っている材料よりも良いものを見つけるとすぐに配合を変えてしまいます。折角売れるようになった商品の配合や材料を変えることに反対されたことは何度もあります。でもその都度、「今のお客様がゼロになっても新たにそれ以上のお客様が呼べれば良い」と思い切ります。



 他によく売れる商品には、秋から冬にむけて販売する「生チョコもち」があります。この商品も何度か材料を替えて今の商品に落ち着きました。チョコレートはベルギーチョコレートのみを使用し、生クリームは純乳脂肪で増粘多糖類などの添加物を含まないものを使っています。このチョコレートと生クリームとの組み合わせは口溶けがよく、味も濃厚で大変おいしい商品になりますが、作りにくく、当初は何度も失敗しました。また、ベルギーチョコレートに替えた時にはそれまでの国産チョコレートの倍ほどの単価になりましたので、売価を大幅に上げざるを得ず、みんなに反対されました。よく売れる商品に育ったところだったので反対意見が大半でしたが強行しました。それから7~8年経ちましたが、今あちらこちらで高級チョコレートを謳う看板が出ているのを目にするにつけ、あの時の判断は正しかったのだと思っています。

 団子、柏餅に使う米粉は、搗いて粉にしたものを使っています。昨今はロールで挽いた粉がほとんどですが、出てほしくない粘りが出てしまいます。私がそれを感じることができるのは練って蒸し上げた種を機械で搗くときです。私の使用している餅搗き機は、搗き落としの杵搗きで手で返します。旧式の機械ですが餅や団子の生地などを搗くのにこれに勝るものはありません。この機械で手で返して初めて餅や米粉の良さが判ります。今この機械で餅を搗く人や搗ける人が少なくなっています。古い方式の機械ではありますが、壊れた時にはまた同じ方式のものを買いたいと思っています。

 生栗を剥いて、その栗に砂糖を加えず使っている栗蒸し羊羹は、日もちはしませんが栗の香りがよくします。

 黒砂糖はういろや饅頭の皮に使いますが沖縄県産のもののみを使っています。近年はますます高価になりましたが沖縄県産ならではの深い香りがします。

 近年では香り無頓着な人が時に若者に多いことが、作り手として残念に思います。口当たりの良い柔かい商品を好む傾向が強く、素材の香りのことはあまり気にしない様子が多く見受けられます。

 また、若い人の嗜好は洋菓子にシフトしています。この子供はますます和菓子を口にしません。幼い頃に食べなかったものは大人になってからも口にしないことが多いので、10年後や20年後は今よりもさらに和菓子の需要が減るだろうと気になっています。



 皆さんが旅行で初めての土地に行かれた時、見慣れたコンビニが自分の町と同じ商品を売っているのではなく、それぞれの店がそれぞれの商品をそこでだけ売っていたら旅の楽しさも一味違うものになるのではないでしょうか。そのためには私達のような個人店が個性を生かした店作りをすることが大事だろうと思っています。